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太宰治とバーのおっちゃん

  • 執筆者の写真: 恵琳
    恵琳
  • 2022年11月20日
  • 読了時間: 3分

今年はあまりにもたくさんの人間関係を失った。それでも私は生きていかねばならないのだ。なんと苦しいことか、生きるというのは。二度と戻らぬ縁を悔やみ、絶縁の痛い記憶にずっと苦しんでいかねばならぬとは。私はあまりにもいい人たちを失った。私は偉大な人に群がり嫌われ潰される市場の蠅なのだ。

そうやって日々自分の存在を呪っていたが、今日は珍しく、太宰治の長編小説二編が収められた『惜別』(新潮文庫)を携えてバーに出かけた。

酒は飲まないのだが、カルピスを飲み、麻婆ズッキーニ丼弁当とチョコレートと柿ピーとチーズを平らげ、『惜別』所収の長編『右大臣実朝』を読み進めた。

『吾妻鑑』の引用と、実朝に仕えていた男の回想が交互に書かれるという形で物語は進んでいく。これまで読んだ中では初めての形式だ。男の回想の部分ではとにかく敬語がこんがらがっていて読みにくい。

眠気を抑えてそんな文章を読んでいたとき、私はバーに来ていたおっちゃんが「障害者はめんどくさい」と言っていたのを耳にした。それで私は「あの、『障害者はめんどくさい』って言わはりましたけど、私そういうこと他の人に言われて傷ついてきてるんですよ」と言った。

するとおっちゃんは人の良い和やかな顔をこちらに向けてこう言った。

「あのな、俺は障害者福祉の仕事してんねん。『障害者はめんどくさい』っていうのは、『障害者の人と関わる際には、相手一人一人によって違う配慮が求められる』っちゅうこっちゃねん。それを簡単に『障害者はめんどくさい』って言うたんや。あかんか?『めんどくさい』があかんならどう言えばいい?」

私は「『障害者と付き合うときは配慮が必要になる』、ですかね」と答えた。

おっちゃんは私から「私はASDとADHDの当事者なんです。(ネット加害の)トラウマが蘇ったら『わあっ』と叫んでしまいます」と聞いて、次のようなことをニコニコしながら言ってくれた。

「発達障害さえなければもっと楽やろな、と思うときもあるやろけど、実際は障害があろうがなかろうがみんな大変や。みんな同じ。これからもっと苦しいと思うけど、頑張れよ。あんた努力したことあるか? ないやろ。脳みそフル回転させて、周りの人に興味持って(周りの人の気持ちを考えて)、失敗したら明るく『どこか間違えましたか』って訊くんやで。沈んだらあかん。前向いとき」

言われたときは正直「まだ生きなあかんのか、頑張らなあかんのか、辛いわあ……」と震えた。ああ、まだ生きないといけないのか、苦しいなあ、と思う。しかしこの世に自分がまだ死なずに存在するという事実を拒絶せずに受け入れ、寿命が尽きるまで生きるしかないようだ。

「もう『成長』とか『努力』という言葉が嫌で嫌でしゃあないんです」とおっちゃんに言うと、「まあ目の前のこと一生懸命やればええわ。遠く見すぎ」と、やはり和やかに言ってくれた。

最近朝布団から起きられないせいでまともに事業所(障害者の働く場)にも行けていない。苦しい日々はまだ続きそうだ。でもとりあえず今持っている太宰治の本は全部読み切ろう。そして新潮文庫の太宰治の本を全部買い揃えよう。それと事業所に行ける日を少しずつ増やしていこう。まあそれを目下の生きる目的にすれば良さそうだ。

 
 
 

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