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ウタはヒトラーである(ネタバレ過剰。映画を観た人だけ読んでください!)

  • 執筆者の写真: 恵琳
    恵琳
  • 2022年9月8日
  • 読了時間: 5分

更新日:2022年9月10日

(文中、『ONE PIECE FILM RED』の脚本家の名前に間違いがありました。脚本家は尾田栄一郎先生ではなく、黒岩勉さんです。よく調べずに書いて申し訳ありませんでした)


ある日の夜遅く、話題の映画『ONE PIECE FILM RED』(以下、『FILM RED』)を家から一番近い映画館へ観に行った。

実は映画を見る数ヶ月前、ウタの歌唱シーンを演じるAdoの劇中歌『新時代』という歌をスポティファイで聴いたとき、「邪魔者を消す」という内容の、ファシズム・ナチズムとしか思えない歌詞が出てきたので、聞いたはじめは「Adoなんか大嫌いだ!」と強い憎しみを覚えた。そして、『FILM RED』も観たくなくなった。

しかし、ラジオやネットなどで目に耳に繰り返し入ってくるのは、『FILM RED』の情報やAdoの劇中歌。そして私は段々と「観てみたい」と強く興味を惹かれるようになっていった。


そして、9月はじめの平日夜遅く、私は明日の仕事があるのに映画館に行って、懸案の『FILM RED』をやっと観た。


ルフィ率いる麦わらの海賊一味は、音楽の島・エレジア島にやってきて、ウタの観客前初ライブに熱狂しながら参加する。

(エレジア島――美しい名前だが、エレジー=哀歌を連想する名前だ……これものちの悲劇の伏線になっていたのか……)

そしてウタが現れ、例の『新時代』を圧倒的な歌唱力で歌う。私は歌詞の残酷さよりも映像の圧倒的美しさに目を取られていた。80年前のドイツ人が、ナチスを率いるアドルフ・ヒトラーの残虐で排他的な演説内容に注目せず、ヒトラーの火を噴くように情熱的な喋り方と、白丸に鉤十字のどぎつく目立つ赤い旗のデザインに酔いしれるのと同じ過ちを犯したわけだ。

そしてルフィはゴムゴム能力でビョーンとウタのステージに飛んでいき、「こいつ、シャンクスの娘なんだぜ」と暴露する。

ウタはきょうだいであるルフィとの再会を喜んだが、ルフィが海賊をやっていると知った瞬間、顔色を変える。そして海賊に大切なものを略奪され、大切な人を殺された一般の人々の悲嘆の声が、観客席から響き渡る。


こうして、ウタの海賊狩りが始まった。この行為は、ナチスドイツのユダヤ人狩りを強く連想させる。美しさの中に狂気を孕んだ人間だ、ウタというのは。このような人間こそ本当に警戒すべきファシストである。


これはまさに、正義と正義が激しく対立し、しのぎを削る映画だった。ウタとそれを止めたい海賊側、どっちの言い分もよくわかる。しかしどっちも完全に正しいとはいえない。

ルフィたちに「海賊なんかやめなよ」と提案し、海賊狩りを始めるウタ。そしてそれを止めさせるべく奔走する海賊たち。

ウタは海賊たちに象徴される武力や暴力に反対し、平和で幸せな「新時代」を作ろうとしているわけで、その純粋な思想には好感が持てた。しかしだからといって海賊たちを「狩って」五線譜の上に縛り付けていいわけがない。殺していないにしろ、これは海賊たちの自由を奪う終身刑と同じではないか。

今まで私は「死刑の代わりに終身刑を導入せよ」という意見で生きて来たが、終身刑も嫌だなと思うようになった。では懲役何年を最高刑にしようか。迷うところである。


話を元に戻そう。

ウタはステージで「ウタウタの実」を食べ続ける。ウタウタの実を食べた人間は、眠ることができなくなり、最終的には死に至る。まるで麻薬のような実だ。ミュージシャンが麻薬を使うのと同じではないか。

そしてウタは、眠らずに歌を歌い続け、その歌を聞いた世界中のほぼ皆を幻の世界に閉じ込めて、そのまま永遠に眠らせようとしていた。生であれ、電伝虫(ワンピースの世界における電話のようなもの)越しであれ、画面越しであれ、ウタの声を聞いた者はみな眠りにつき、幻の世界に閉じ込められるのだ。


しかし、その計画もうまくはいかない。海賊たちはグループを超えて連帯し(抗日民族統一戦線を思い出す)、ウタに対抗するためにどうすればいいか考える。

そして辿り着いたのが、エレジア島の地下室だった。そこにはたくさんの古い本が並べられていたが、天井を見ると、古代文字とおぞましい絵が書いてあった。才女ニコ・ロビンが解読した結果、「トット・ムジカ」という歌の楽譜の存在が明らかになる。「トット」はおそらくドイツ語のTod(死。トートといったほうが本来の発音に近い)、「ムジカ」はおそらくイタリア語のMusica(音楽)だろう。つまり「死の音楽」である。

ドイツ語とイタリア語を使っている時点で、独裁者・ファシズム感満載だ。きっと脚本家の黒岩勉さんもヒトラーやムッソリーニのことをたくさん勉強した上で、この映画の脚本を書いたのだろうと推測する。

そしてその「トット・ムジカ」をウタが歌えば、悪魔が呼び出されてしまうという。そしてそれを倒すには、現実世界とウタの幻の世界の両方からその悪魔に攻撃を加えねばならないらしい。

かつてそのトット・ムジカは『FILM RED』の物語の始まる12年前、幼いウタによって歌われたことがある。

エレジア島のコンサートで、歌の才能を称賛されたウタは、様々な歌を夜遅くまで歌っていた。しかし、その楽譜の中に「トット・ムジカ」の楽譜が紛れ込んでいて、それを歌ったウタは悪魔を呼び出しエレジア島を全焼させる。しかし幼かったウタはすぐに眠りにつき、シャンクスたち海賊の活躍もあって、それ以上の被害は抑えられた。そしてシャンクスは、ウタとともに生き残った音楽の先生に「俺がこの災厄の罪を被る。ウタには真実を告げるな」と言い残して去っていった。

そうしてウタは先生のもとで音楽の才能を伸ばすとともに、海賊を憎むようになってしまったというわけだ。


さらにウタはシャンクスの実の娘ではない。シャンクスたちの略奪品の中に赤ん坊が紛れ込んでいて、その子がウタだったという。拾い子を実の子同然に大切に育てるシャンクスに、懐の深さ、愛の深さを感じる。


なお、ウタも自分の歌が持つ破滅的な力はすでに知っており、それでも、「今更後戻りできないよ!」と絶叫する。

そして懸案のウタへの同時攻撃は、奇跡的に現実世界にいたシャンクスと、幻の世界にいた麦わら海賊一味たちによって無事成功した。

そしてウタウタの実の効果が切れつつあるウタは、シャンクスの腕に抱かれ、最期に平和の歌を歌って、その短い一生を終えた。


世界に平和が戻り、エレジア島を後にしたルフィは、いつもの通り「海賊王に、俺はなる!」と宣言するのだった。今度は世界を平和にしてね、ルフィ。


(映画が終わった後、終電を逃した私は1時間歩いて歩いて、ようやっと家に辿り着いたのだった。自宅で無事寝て、また目覚めることができて本当によかった。ふう)

 
 
 

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